​三勝
- Sankatsu -

​​歌詞

国は豊州海部の郡

佐伯御領は堅田の宇山

小村なれども宇山は名所

名所なりゃこそお医者もござる

医者のその名が玄良様よ

一人息子に伴三と言って年は二十一男の盛り

伴三見る人聞く人ごとに

希な者じゃと皆誉められる

賞める言葉が遂い仇となる

同じ流れる川下村の

潮の満干を見る柏井の

登り上れば行者がござる  

お名を申さば龍王院よ

一人娘にお民と言うて

さてはお民はきれいな生れ

舟の船頭や村若衆に

我も俺もと心を寄せる

なれどお民は堅人なれば

そこで伴三が心を寄せる

何時か 〱 と思いしうちに

来る正月二十八日は

龍王院なり初命日

町も田舎もあるとく人も

我も俺もと参詣なさる

何れお民も詣るであろう

我も参詣致さんものと

我が家帰りて伊達装束よ

下に召すのが秩父の肌着

上に召すのが京縞あわせ

帯はとうせい京博多帯

三重に廻してきちんととめて

黒の羽繳に梅鉢の絞

裾に白足袋厚革雪駄

印ろう巾着小脇に振らせ

匂い袋をたもとに入れて

二尺一寸落しに差して

しゃらり 〱 と我家を出でて

急ぎゃ間もなく龍王院の

一の鳥居でお民と出合い

しかと手を取り顏打ちながめ

お民さんとはお前の事か

俺は真実貴女の事を

ねては夢見るさめては思う

余り思うに照る日も曇る

冴えた月夜が早や雨となる

どうか一夜の迷いの雲を

晴らせ給えや これお民さん

言えばお民の申せし事にゃ

手物縫針如何よな儀でも

かなえ上げます伴三様よ

色の道なら先づご免なれ

ご免 〱 と袖振りはなす

そこで伴三が腹打立てて

人に大事を 明させおいて

なびくないとわそりゃどうよくな

物にたとえて落すじゃないが

向う遙かな大竹山も

嫌な風でもふき来りゃなびぐ

同じ並ひの若木の桜

花は色よく咲いたと言えど

人が手折りゃにゃな若木で朽ちる

水に根のない浮草さえも

人にふまれた道草さえも

露が落ち来りゃ一夜をとめる

利功発明稀なる人も

人の心のうきめは知らす

おシャカさんさえ六十三で

王のきさきの小夜照姫に

悪をしかけたためしもござる

言えばお民は理に責められて

一夜二夜なる契りは嫌よ

二世も三世も又先の世も

かわすまいぞへ伴三様よ

言えば伴三打喜んで

かわすまいとのきしよ取交す

きしよが三枚さんしよ二枚

合せ五まいのきしよ取交す

広い堅田を早や吹き廻す

茶飲み話もお民と伴三

流行る小唄もお民と伴三

伴三母さんお寺に参り

帰る途中に茶飲みに寄れば

人の事かと噂に聞けば

聞けぱ我が子の伴三の事よ

我家帰りて伴三呼んで

伴三よく聞けこか又大事

そちは柏井龍王院の

一人娘のお民とやらと

そちと二人は良い仲そうな

お民山伏そちゃ医者の子よ

医者とほしやとは縁付きゃならぬ